豚肉の加熱について
豚肉の加熱について調べると、大体が
寄生虫がいるから危ない!よく加熱しましょう!
みたいな話が出てきます。
でもこれ、何も言ってないのと同じだと個人的に思います。
寄生虫や細菌がいる可能性がある、ということなら牛肉も鶏肉も、あるいは魚も同じ。
この温度まで加熱すれば寄生虫、細菌は死滅する、という基準を示さなければあまり参考になりません。
調べてみた限り、豚肉にいる可能性がある寄生虫や細菌で一番加熱が必要なのはサルモネラ菌。
これは60度3.5分間の加熱で大幅減少、60度20分間で死滅。
(http://takakis.la.coocan.jp/sarumonera.htm)
なお、サルモネラ菌、豚肉に限らず牛肉にも鶏肉にも普通にいます。
ちなみに内臓を食べる場合はE型肝炎ウイルスがいる可能性があり、こちらは71度で5分以上加熱することが推奨されています。
(http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/eiken/idsc/disease/hev1.html)
アメリカでは豚肉も牛肉と同様、63度での加熱が推奨されているとのことで、細菌や寄生虫の死滅温度と整合性があります。
(https://news.allabout.co.jp/articles/d/69260/)
さて、タンパク質にはミオシンとアクチンがあり、加熱によって変性します。
変性温度はミオシンが50度、アクチンは65度。
このアクチンは、変性すると水分を外に出す性質があり、これが加熱しすぎると肉がパサパサに固くなってしまう理由です。
また、肉が赤いのはミオグロビンというタンパク質のせいで、このミオグロビンは70-80度で変性します。
そして、ミオグロビンは単なるタンパク質なので、このミオグロビンがあるかどうか、つまり肉が赤いかどうかは、肉の安全性との直接的なつながりはありません。
マグロが赤いのもミオグロビンのせいですが、だからマグロの刺身が危険、とはなりません。
ミオグロビンが完全に変性しきるほど熱が入っていれば(ウェルダンの状態)、寄生虫や細菌は全て死滅しているだろう、とは言えます。
ただし、その場合、アクチンも変性しきっており、肉はパサパサ、旨味も全て流れ出ているでしょう。
ステーキで言うと、レアは55-65度、ミディアムで65-70度、ウェルダンで70-80度ですので、ミディアムレア程度(65度前後)の加熱は安全性とうまさを両立させれるちょうど良い温度ということになるのでしょう。
海外の卵で温泉卵やポーチドエッグを作っても大丈夫なのも(卵はサルモネラ菌に感染しやすい)、65度程度の加熱という、[タンパク質は凝固しきらないが細菌、寄生虫は死滅する]ちょうど良い温度での加熱によるものかもしれません。
なお、生に近いレア(55度程度の加熱)で、更にステーキのような短時間の調理ということになると、理論上は寄生虫、細菌リスクが残るということになります。
結局、タンパク質の変性と殺菌、寄生虫の死滅という観点から言えば、豚肉でも牛肉でも結論は変わらず、ミディアムレア程度の火の通しが安全性と美味しさを両立できる火加減、ということになりそうです。